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マンション管理組合の収益事業に係る経費とその按分

2021年08月30日(月)12:55 PM


 マンションの屋上部分の一部を携帯電話等の基地局の設置場所として賃貸して賃貸収入を得た(不動産貸付業という収益事業となります)ことから、法人税等の申告をしているマンションの管理組合も多くいらっしゃると思います。
 これに関して、その賃貸収入(以下「基地局収入」とします)に係る費用としてどのようなものが経費になるのか、また、その経費のどの程度の金額が経費に算入できるか(費用の配賦・按分)は判断に迷うことも多くあるかと思います。

 経費として考えられるのは、

 ①事務管理業務及び管理員業務の対価としての管理委託費
 ②設備点検業務などの対価としての点検費
 ③マンションの共用部分を対象とする火災保険料

などがあります。

 その判断の参考となる事例として、2019年の国税不服審判所裁決があります。

 審判所は、以下の点を理由に上記①~③の費用を、この不動産貸付業に係る設置場所の維持管理のための対価あるいは賃貸部分の維持管理に必要な保険に係る費用と認めています。
 そのうえで、基地局収入を得る不動産貸付業という収益事業と、その他のマンション管理業務という非収益事業のいずれにも共通する費用であると認定されました。

 ・管理委託費について、その支払先である管理会社が行うマンションの管理に関する業務は、基地局収入を含   む事務管理業務であること
 ・その屋上の賃貸部分の外観目視点検及び基地局設置に係る電力量計の検針を含む管理員業務であること
 ・火災保険料については、共用部分を対象とする保険に係るものであり、その対象部分に屋上の賃貸部分が含   まれていること、など

 そして、認定した共通費用に係る収益事業と非収益事業への配賦方法については、すべての費用を「売上割合」などの一律の基準によって配賦するのではなく、それぞれの費用の性質や内容に応じた合理的な基準で配賦するのが妥当であると判断されました。
 よって、管理や点検業務については「管理員の従事時間による按分割合」、共有面積に関する火災保険料については「共用面積の按分割合」で配賦し、収益事業に係る費用の額を算定するのが相当であるとされ、実務上参考になるかと思います。

 さらに、この按分計算を行うには実務上は下記のような資料が必要となります。
 管理不十分などで紛失したりしてしまうと、適正な経費計上ができませんのでお気を付けください。

 ・マンション側と管理会社との契約書などで、事務管理業務や点検業務の具体的な範囲がわかるもの
 ・管理員の従事期間や時間がわかる資料
 ・マンションの共有部分の面積がわかる資料
 ・携帯基地局の会社との賃貸契約書などで、基地局として賃貸する面積のわかるもの


 なお、携帯基地局等設置場所収入だけでなく、看板設置料収入や、居住者以外の外部の方に対する駐車場の貸付収入なども、収益事業となりますので税務申告の際にはご注意ください。



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