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最近の税務調査の傾向

2014年08月26日(火)2:46 PM
 国税庁では、システムを活用して、データベースに蓄積された所得税や法人税の申告内容や各種の資料情報などを基に、業種・業態・事業規模といった観点から分析して、調査対象を選定しているそうです。

 実地調査で把握した1件当たりの申告漏れ所得金額は、平成24事務年度においては、申告所得税は839万円、法人税は1,071万円となっています。
 税務調査の件数自体は減少しているのですが、1件当たりの追徴税額が増加し、全体の追徴税額としては、ほとんど変わらないという状況になっています。これは、平成25年から税務調査の事前通知が義務化され、事務手続きの都合上、調査件数がこなせない状態にあるのを金額でカバーしている状況といえます。

 また、調査件数の減少をうけて、国税庁では昨年から「実地調査以外の多様な接触手法も活用する」としています。
 そのひとつが税務署からの「お尋ね」文書です。
 これは、行政指導であるため、税務調査のような事前通知の手続きはなく、回答の義務も必ずしもないものとなります。
 しかし、この行政指導に基づいて自主的に修正申告を行えば、加算税はかからない(延滞税はかかる)ため、 「お尋ね」についての対応は容易に無視はしないほうがよいともいえます。

 国税庁が最近、税務調査において重点的に取り組んでいる事項としては、「海外取引」「消費税」「過少申告・無申告」が挙げられます。

①海外取引

 海外取引について当局は、国外所得や国外資産の隠匿、国際的な租税回避スキーム、非居住者に対する源泉徴収などの課題に注力し、海外取引法人等に対しては、租税条約に基づく情報交換制度を活用するなどして調査にあたるとしています。
 また、12月31日時点で5000万円を超える国外財産を保有する場合に、届出が義務づけられている『国外財産調書制度』がスタートしたこともあり、当局が力を入れていることがわかります。
 この国外財産調書制度は、調査によって未提出や虚偽記載が発覚すれば、場合によっては懲役刑もあり得ますので、失念しないようにしなければいけません。

②消費税

 消費税については、課税売上の除外や外注費への仮装などによる不正還付や、免税点制度の悪用、不正計算などを重視していくようです。
 平成24年4月より消費税の還付申告書を提出する場合、「消費税の還付申告に関する明細書」の添付が義務化されました。これにより還付の原因となる事実関係について、十分な審査が行われます。
 税務署から請求書等の提出を求められることもあるため、きちんと証憑書類を保管しておくことが重要です。

③過少申告・無申告

 本来は黒字であるのに、赤字を装っている場合などの所得の過少申告や、事業を行っているにもかかわらず申告をしていない無申告についても重点的に取り組むとしています。
 今年度が赤字でも仮に前年度が黒字であった場合、当局としては利益調整をしているかもしれないと考えますので、赤字法人だから税務調査はないとは限りません。


 その他にも、現在では取引先とのやりとりが電子メールによる場合が多くなったため、税務調査でも電子メールのやりとりが調査対象となるケースが増えているようです。
 メール内容の掲示・提出を求められた場合、画面上で調査官に確認できるように示すか、メールをプリントアウトしたものを提出すればよく、基本的にはパソコン自体を調査官に触らせる必要はありません。
 ただ、税務調査で問題となるメールを、意図的に削除されていることが発覚し重加算税が課せられる事例もあるため、注意が必要です。


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